(CV:桑木栄美里) 【ストーリー】 <プロローグ/日本書紀> 飛驛の国に宿儺という人あり。体は一つで二つの顔があった 天皇に従わず、人民を略奪するのを楽しみとした 難波根子武振熊難波根子武振熊(ナニワノネコ/タケフルクマ)を遣わして殺させた -日本書紀- <シーン1/出羽ヶ平(でわがひら)にて> ■SE〜森の音+村人のざわめき 「なに!?武振熊(タケフルクマ)が攻めてくるだと!?」 大和朝廷から伝令を受け取った家臣の顔は青ざめている。 あの神功皇后の軍を率いた武振熊が、飛騨に宣戦布告をしてきたのだ。 私の名は「句儺=クナ」。 双子の兄は「宿=スク」という。 クナの「儺」という文字は、邪鬼を追い払うという意味。 私はこの飛騨で、神事を司る祭司である。 兄の「宿」という文字は、前世から受け継ぐ力という意味を持つ。 巫女でもあり、弓の名手と言われる私と、超人的な怪力を持つ兄。 私たちは一心同体となり、飛騨の国を護ってきた。 村人たちからは、救世観音(くせかんのん)の化身として敬われている。 ここ飛騨は古くから農耕が盛んで、独自の文化を持ち、栄えてきたところ。 森林資源だけでなく、鉄鉱石などの鉱物資源にも恵まれている。 当然、中央集権をすすめる大和朝廷が黙っているはずはない。 今まで、何度も飛騨に軍勢を送り、攻めてきたが、 山岳地方の地形を生かした戦略で、ことごとく打ち負かした。 だが、いよいよあの名将・タケフルクマが参戦する。 今までのようには簡単にいくまい。 強者の兄・スクも私を呼び、2人で戦略を考えなければならない。 ■SE〜夜の森/虫たちの鳴き声 いつものように出羽ヶ平の洞窟で思案しているとき、 一人の少女が入口からのぞきこんだ。 「どうしたんだい?」 私の問いかけに無邪気な笑顔で答える少女は、 ”食べてください” と言って握り飯を私たちに手渡す。 つやつやと輝く米粒を口に運んでから 兄と私は顔を見合わせ、大きくうなづいた。 この子たちを守らなければ・・・ ■SE〜朝/小鳥のさえずり 翌朝、村人たちを集めて、私が宣告する。 「私と兄はこの村を出て、大和朝廷を迎え撃つ。 ともの兵士も最小限にする。 万が一、我々が破れてもみなは決してヤマトに抗ってはいけない」 どよめきがおこる。 兄はすかさず、巨大な鉄剣を地面の岩にうちつけ、村人の注目をひく。 米づくりの長、最古参の女性は、 ”せめて最後の食事でもてなし、二人のご武運を祈願したい” と懇願した。 仕方なく同意するが、今晩から位山(くらいやま)に向けて出発するので 食事は道中でとると伝えた。 昨夜の少女は、状況を知ってか知らずか、瞳いっぱいに涙をためている。 「大丈夫。ただ討ち死にはしない。 みなを護ることをここに約束する」 今度は歓声に包まれる。 兄に目配せをして、我々は洞窟に戻った。 ■SE〜夜の森/フクロウの声 大和朝廷の軍勢は、我々の10倍はくだらない。 その条件で戦うには、戦略しかないだろう。 村人たちに惜しまれつつ出発した我々は、夜が明ける前に位山へ登った。 地の利を生かす戦術と、霊峰・位山のご加護を信じて。 <シーン2/位山にて> 夜明けを待たずにタケフルクマの軍は迫ってきた。 そしてついに開戦。 我々は山の上からの奇襲で先手をとる。 ■SE〜合戦の音 戦いは一昼夜に及んだ。 歴戦の勇者たちの活躍。 森の大木を流星刀で薙ぎ倒し、敵目掛けて投げつける兄。 正確に迅速に弓矢を射る私。 物量では劣るものの、超人的な我々の兵力に、タケフルクマは苦戦しているようだ。 だが、戦いに時間がかかるほど、兵士たちには疲れが見えてくる。 仕方なく、いったん頂上付近の我々の本陣、洞窟へとひくことになった。 洞窟へ戻ったとき、我々は信じられないものを目にする。 ”食べてください” なんと、あの日の少女が、握り飯を持ち、洞窟で待っていたのだ。 満面の笑顔で。 ”武器を運ぶ籠の中に隠れていたようです” またしても、兄と顔を見合わせる。 すぐに二人で少女の方へ向き直り、 ”ありがとう。えらかったね” と労を労う。 そのまま、友軍の方へ振り向き、戦略を伝える。 「...