Épisodes

  • 132 日本のテック系スピーカーはもっと助けが必要
    Dec 17 2025
    日本のテック系カンファレンスには、優秀な教授やエンジニアが数多く登壇します。しかし、会場を後にするビジネスリーダーの多くは、「すごい内容なのは分かる。でも正直、よく分からなかった」と感じています。重要なタイムラインが読めず、フォントが小さく、スライドが情報で埋め尽くされていると、日本企業や外資系企業の有能な意思決定者でさえ、何が重要なのかをつかみきれません。本記事では、退官した大学教授の講演という実例をもとに、高度な技術テーマを「分かりやすく、記憶に残るストーリー」に変える方法を整理します。グローバルなリーダーシップ・セールストレーニングのリーダーであるデール・カーネギーの原則に基づき、日本のテック系スピーカーが「専門性への尊敬」だけでなく、「実際のビジネス意思決定への影響力」を獲得するためのポイントを解説します。 なぜ優秀な専門家ほど、非専門の聴衆を置き去りにしてしまうのか? ある技術系カンファレンスで、退官した大学教授が最新技術について講演しました。研究者としては世界レベルと言ってよいほど優秀でしたが、聴衆の多くは同じような学術的バックグラウンドを持っていません。その結果、数分もしないうちに多くの参加者が「ついていけない」状態になってしまいました。特に問題だったのは「将来ビジョン」を示すタイムライン・スライドです。技術の発展プロセスを年表形式で示した極めて重要なスライドでしたが、デザインは美しいものの、フォントは小さく、色が多すぎ、構成も複雑でした。聴衆から見ると「何が書いてあるのかほとんど読めない」状態で、本来伝えたかったメッセージはまったく届いていませんでした。これは典型的なパターンです。専門家は、自分の研究やモデル、データに強い愛着を持っています。一方で、「分かりやすく伝える」ことは後回しになりがちです。R&D主導の日本企業や高度に専門化した外資系企業では、「エンジニアは情熱的だが、聴衆は点と点をつなげられない」というギャップが頻繁に起こります。デール・カーネギーの原則で言えば、「相手の関心事の立場から話す」ことができていない状態です。教授は自分の頭の中のモデルから話しており、経営企画、営業、事業責任者などが「どう理解し、どう意思決定すべきか」という視点が抜け落ちていました。 Mini Summary: 専門家が非専門の聴衆を失う最大の理由は、「自分の視点」で話し、「相手の視点」に立っていないことにあります。どれほど優れた研究でも、聴衆の世界に翻訳されなければ存在しないのと同じです。 技術系スライドの「よくある間違い」とは? 多くの日本のテック系スピーカーは、「知っていることをすべて1枚のスライドに詰め込む」という同じ失敗をします。複雑なタイムラインを1画面に押し込み、長年の研究成果や膨大なデータを、1枚のスライドにギュッと詰め込もうとしてしまうのです。先ほどの教授のタイムライン・スライドもまさにその典型でした。技術の未来ロードマップを一望させようとした結果、フォントは極端に小さく、色の種類も多すぎて、情報が「ごちゃごちゃした模様」にしか見えません。東京の本社で意思決定を担う役員や、法人営業のマネジャー、経営企画のメンバーが参加している場で、これは非常に大きな問題です。スライドが読めなければ、「投資すべきか」「リスクは何か」「どこにチャンスがあるのか」といった戦略的メッセージは決して相手に届きません。より良い方法は、タイムラインを複数枚に分割することです。最初のスライドでは全体像をシンプルに示し、次のスライドで重要な期間(例えば今後12〜24カ月)だけを大きなフォントと少ない色で拡大表示します。あるいは、全体のタイムラインを薄く背景に残したまま、注目すべきセグメントだけをスポットライトのように強調してもよいでしょう。詳細な情報は、配布資料やレポートに任せ、プロジェクター画面には「本当に伝えたい要点」だけを映すべきです。デール・カーネギーの観点からも、スライドは「会話を支える道具」であるべきです。1...
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  • 131 取引が本物かどうかを見分けるには?
    Dec 3 2025
    BtoB営業において、最もストレスが大きいのは、「これはいける」と信じて時間と労力をかけた案件が、最終的に一件も決まらないことです。特に日本企業や外資系日本法人の複雑な決裁プロセスの中では、「この取引は本当に動いているのか、それとも幻想なのか」を見極めるのが非常に難しくなります。 営業の現場では、「出会う見込み客の3分の1は決して買わない、3分の1は将来的には買う可能性があり、残りの3分の1は条件が整えばすぐにでも買ってくれる」という感覚則があります。問題は、最初の面談の段階では、そのどのタイプなのかがほとんど分からないことです。だからこそ、日本の決裁プロセスを理解し、正しい質問で案件を見極める力が、プロフェッショナルには不可欠になります。 見込み客にはどんなタイプがあるのか? 多くの法人営業の現場で出会う見込み客は、大きく3つのグループに分けられます。「絶対に買わない人」「今は買わないが、将来的に可能性がある人」「条件が揃えばすぐにでも買う人」です。厄介なのは、この3つのタイプが見た目ではほとんど区別できないことです。誰もがフレンドリーで、前向きで、「興味があります」と言ってくれます。 この不確実さが、営業担当者を「過投資」に追い込みます。「ノー」と言われても引き下がれず、「いつかイエスになるかもしれない」と信じて話し続けてしまう。15分の予定だったミーティングが、気づけば90分になっている。終わった後も、「決まるのか、決まらないのか」モヤモヤを抱えたまま帰社することになります。 実際の営業プロセスは、未知のジャングルに入っていくようなものです。表面だけの好意、予算も権限もない相手、社内政治で止まってしまう案件など、あちこちに罠やぬかるみが隠れています。そこで重要になるのが、「この人はどのタイプなのか」「この案件はどの程度リアルなのか」を早い段階で見極めるための判断軸です。 デール・カーネギーの原則で言えば、「相手の立場に身を置いて物事を考える」ことから始める必要があります。こちらの提案を押し込むのではなく、相手企業の制約条件―予算サイクル、本社の影響力、他部門からの抵抗―を丁寧に聞き出し、それを基準に案件を評価していく。表面的な「好印象」ではなく、実際の制約を理解することで、取引が本物かどうかをより正確に判断できるようになります。 ミニまとめ:出会う見込み客は、「絶対買わない」「いつか買うかもしれない」「すぐにでも買う」の3タイプに分かれます。違いを見抜くには、表面的な好意ではなく、企業の制約や状況を丁寧に聞き出すことが重要です。 なぜ「決裁者」を見誤ると、永遠に決まらないのか? 日本企業や外資系日本法人で特に注意が必要なのは、「見えている権限」と「本当の権限」が一致していないケースです。肩書としては社長やカントリーマネージャーであっても、実際の決裁権は本社のCFOや人事、あるいは親会社から派遣された役員が握っていることが少なくありません。 例えば、大手日本企業に買収された会社の外国人社長と昼食を取りながら、営業力強化のための研修導入について盛り上がったとします。社長は非常に前向きで、「ぜひやりたい」「うちの営業を変えたい」と熱く語ってくれる。営業側から見ると、これは「かなり確度の高い案件」に見えます。 しかし、その裏側で、親会社から派遣された日本人CFOが、予算と最終決裁をほぼ一手に握っているとしたらどうでしょうか。研修方針、投資の優先順位、ベンダー選定などは、実質的にこのCFOの判断で決まっている。ここに気づかないまま、「社長はやる気だ」と信じてフォローを続けても、案件はいつまでも前に進みません。 このケースが示しているのは、「買収・合弁・持分法適用」といった本社主導の構造がある場合には、必ず「本社から誰が来ているのか」「その人はどこまで決裁できるのか」を確認する必要があるということです。表面的な熱意や肩書きに頼るのではなく、稟議フロー、予算権限、リスクを負う人は誰か――という視点で、真の決裁者を見極めていきます...
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  • 130 リーダーシップの指針 パート1
    Nov 20 2025
    多くの日本企業や外資系企業の日本拠点では、成果を上げたマネジャーが昇進し、突然「リーダー」になります。しかし、そのタイミングで「人をどう導くのか」という地図はほとんど渡されません。本や研修、ポッドキャスト、上司やメンターからのアドバイスはあるものの、「結局、月曜日の朝から何を変えればいいのか?」と悩む方は少なくありません。 本記事では、100年以上にわたり世界中でリーダーシップとセールスの研修を提供してきたデール・カーネギーの原則に基づき、日々の部下との対話や顧客対応、経営層とのやり取りの中で使える「リーダーシップの指針」を7つに整理しました。世界的に知られる16の原則のうち前半パートとして、日本のビジネスプロフェッショナル向けにお届けします。 Q1. なぜ優れたリーダーは「弱み」ではなく「強み」から始めるのか? 日本の組織では「課題」「反省点」「できていないこと」に焦点を当てる文化が根強くあります。評価面談や1on1が、気がつけば"ダメ出しリスト"になってしまうことも少なくありません。しかしポジティブ心理学の研究や、デール・カーネギーが長年実践してきた経験からも、持続的な成長は「弱点矯正」ではなく「強みの自覚」から始まることが分かっています。 メンバーに対して「自分は何が得意なのか」「この四半期、どこで一番価値を出したのか」を一緒に言語化していくと、自信が生まれます。その自信こそが、新しいチャレンジや行動変容に踏み出すエネルギーになります。失敗が許されにくい文化だからこそ、「できていること」を土台にすることが重要です。 例えば、東京の法人営業チームであれば、「どの商談がうまくいったのか」「事前準備で何が効いたのか」「その強みを他の重要顧客の決裁プロセスにどう展開できるか」を一緒に振り返ることができます。 これはデール・カーネギーの「心から、誠実にほめる」という原則とも一致します。問題を無視するのではなく、まず強みを認めることで、建設的な対話の土台をつくるのです。 ミニまとめ:フィードバックやコーチングの前に、具体的な成功体験や強みを一緒に確認しましょう。自信が生まれ、課題や新たな目標とも向き合いやすくなります。 Q2. なぜ「信頼」があらゆるコミュニケーションの基盤になるのか? リーダーにとって信頼は「あると良いもの」ではなく、すべてのコミュニケーションのインフラです。信頼がなければ、どれだけロジカルな提案や美しい資料を用意しても、人は動きません。 信頼は、「公平であること」と「言ったことを、言ったとおりに、言ったタイミングで実行すること」の積み重ねで築かれます。日本企業では、同じような顧客に対して説明なく価格差があったり、人事評価の基準が突然変わったりといった"小さな不公平感"に、社員は非常に敏感です。こうした不整合が少しずつ、目に見えない「信頼残高」を減らしていきます。 デール・カーネギーが重視してきたのは、言葉よりも行動の一貫性です。「金曜日までに共有します」と約束したことを何度も守れないリーダーは、どれだけ人前で上手く話しても、やがて信頼を失います。一方で、コスト削減や採用凍結といった厳しいメッセージであっても、誠実かつ一貫した説明があれば、人は納得しやすくなります。 ミニまとめ:信頼は、公平さと約束を守る姿勢から生まれます。小さなコミットメントもすべて、「信頼残高」を増減させる要素になります。 Q3. 現代の組織で、人を本当に動かすモチベーションとは? いまだに多くのマネジャーが、給与やインセンティブ、上からのプレッシャーといった「外発的動機づけ」に頼りがちです。しかし仕事が複雑化し、リモートやハイブリッドが当たり前になる中で、「やれ」と言われて本気で動く人はほとんどいません。真のモチベーションは内面から生まれます。 例えば、外資系企業で働く若手は、「急成長」「グローバルな経験」といった価値観を重視するかもしれません。一方、大手日本企業のミドル層は、「安定」や「社会への貢献」を重んじる場合もあります。KPIや締め切...
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  • 129 人前が苦手
    Oct 8 2025
    最初に結論です。少人数は「精密に近く」、大人数は「拡張して遠く」。この切り替えができれば、どんな会場でも説得力は再現できます。 Q1. 少人数(会議室・打合せ)では何を最優先にすべき? · 座らず立つ:身体が使え、緊張がほぐれ、信頼感が上がる。主催者に着席を促されても、基本は立って話す。 · 6秒アイコンタクト:1人につき約6秒。短いと浅く、長すぎると負荷。ジェスチャーは小さめ・精密に。 · 価値から逆算:参加者の業務・意思決定者・導入後の運用負荷まで把握して構成する。 〈ミニサマリー〉 立つ × 6秒 × 精密 = 親密さと納得感が同時に立ち上がる。 Q2. 大人数(ホール・階層席)で"自分ごと化"させるには? · 常に1対1で話す意識:会場を6セクター(左・中・右 × 前後/階層)に仮想分割。 · "特定の1人"に話す:セクター内の1人に語りかけると、周囲30人へ波及。視線は順番ではなくランダムに跳躍。 · 声は張らず、身体で遠達性:ジェスチャーは大きく明確にし、エネルギーを最後列まで届ける。 〈ミニサマリー〉 6セクター × 1対1 × ランダム視線 = 巨大空間でも「自分に話している」感を生成。 Q3. 伝わる動線設計――L-C-Rムーブの使い分けは? · L-C-R(Left・Center・Right)に"意味づけ"して定点化。無目的な往復はしない。 · 近接の瞬間を作る:前方通路や張り出しがあれば近づいて親密さを注入。 〈ミニサマリー〉 定点=要点。動線は"強調装置"。 Q4. 事前計画で再現性を作るには? · 会場図 → 停車位置 → 視線配当 → 質疑まで台本化。準備が最大の武器。 〈ミニサマリー〉 計画=再現性。偶然に頼らない。 Q5. よくある失敗は? · 大規模で全体に向けて曖昧に話す(→誰にも刺さらない)。1人に届けるつもりで。 · 少人数でオーバーアクション(→圧になる)。精密・小さめに。 FAQ · Q. 緊張で視線が泳ぎます。最初の1分は? A. 近距離は6秒で固定、遠距離はセクター内の1人を捕まえる。 · Q. 声量はどのくらい? A. マイクが拾うので叫ばない。身体でエネルギーを後方へ。 · Q. 動くタイミングは? A. 要点ごとにL-C-Rを固定し、移動=章立ての合図に。 まとめ · 少人数=立つ/6秒/精密 · 大人数=6セクター/1対1/ランダム視線 · L-C-R動線+事前計画で、説得力は再現できる デール・カーネギー・トレーニングは、1912年創設。日本では1963年より、リーダーシップ/セールス/プレゼンテーション/コミュニケーション/エグゼクティブ・コーチング/DEIの分野で個人・企業の成長を支援しています。ビジネスプロTV(隔週木曜:動画+音声)/ビジネス達人の教え(隔週火曜:音声)。公式サイト:www.dale-carnegie.co.jp
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  • 128 成功する営業担当者には計画がある
    Sep 12 2025
    成功する営業担当者にはなぜ計画が必要なのか?

    多くの企業は高額なツールやサブスクリプションを導入しているにもかかわらず、それを十分に活用できていません。情報は頭の中やメモ、バラバラのノートに留まり、営業活動に活かされないのが現実です。営業担当者にとって、計画と記録の徹底が成果を左右します。

    要点: ツールを持つだけでは成果は出ない。使いこなす計画力が必要。

    なぜ会話の記録が重要なのか?

    営業担当者は人と話すのが得意でも、その内容を記録に残すことは疎かになりがちです。しかし「最もかすかなインクは、どんな優れた記憶よりも確実」です。面談後には必ずメモを取り、CRMなどのシステムに入力して共有可能にすることで、成功事例の宝庫となります。

    要点: 記憶に頼らず必ず記録する。これが営業の資産になる。

    効率的なスケジューリングの秘訣は?

    面談スケジューリングは計画の弱点になりがちです。地理的にまとめて訪問することで移動のロスを最小化できます。さらに、見込み客リストを活用し、優先順位をつけた時間管理を徹底することで、最も生産性の高い活動に集中できます。

    要点: 移動効率と優先順位が営業成果を大きく左右する。

    見込み客リストはどう作るのか?

    日本では顧客リストを簡単に購入することはできません。ウェブサイトからのリード、広告、既存顧客、紹介、電話問合せ、コールドコールなど、多様なソースを駆使してリストを作成する必要があります。さらに、電話をかける際は担当者名を把握していなければ"門番"に遮られます。名前を知ることがアポイント獲得の第一歩です。

    要点: リスト作りは地道なリサーチと努力が不可欠。

    行動を数値化すると何が見えるか?

    営業活動では、何人に連絡し、何人と話し、何件アポを取り、何件成約に至り、その平均単価がいくらかを数値化することが重要です。これにより、自分に必要な行動量が明確になり、再現性のある成功パターンを築くことができます。

    要点: 成功の比率を把握し、行動を計画的に積み重ねる。

    まとめ

    · 記録を残すことで営業活動が資産化する

    · スケジューリングと優先順位で成果が最大化する

    · 行動を数値化して成功の再現性を高める

    デール・カーネギー・トレーニングは、1912年に米国で創設され、100年以上にわたり世界各国でリーダーシップ、セールス、プレゼンテーション、コミュニケーション、エグゼクティブ・コーチング、そしてDEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)の分野で個人および企業向けの研修を提供してきました。

    東京オフィスは1963年に設立され、日本企業および外資系企業、さらには個人の方々の成長もサポートし続けています。単なるスキルトレーニングではなく、組織文化の変革やリーダーとしての成長を後押しすることで、ビジネスの成果につなげます。

    私たちは毎週、日本語で役立つビジネス・コンテンツを発信しています。

    ビジネスプロTV:隔週木曜日配信(動画+音声)―リーダーシップ、営業、プレゼンテーションなどを深掘り。


    ビジネス達人の教え:隔週火曜日配信(音声のみ)―リーダーシップ、セールス、プレゼン力を鍛える実践知をお届け。

    👉 公式サイト:www.dale-carnegie.co.jp

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  • 127リーダーシップの本質的理解
    Aug 30 2025
    リーダーシップとは肩書きや権限ではなく、人の力を引き出し、組織を成長させる「関係性の技術」です。今日はその本質を4つの視点から考えていきます。 Q1: リーダーの本質とは「協力を引き出すこと」なのか? リーダーは権威や命令で人を動かすのではなく、協力を引き出す存在です。厳しい状況になると、つい強引になり、指示や通達ばかりに頼りがちですが、それでは人は本気でついてきません。リーダーに求められるのは、メンバーが「自分から動きたくなる」ように導く力です。上から押し付けるのではなく、内発的な動機を刺激し、共に前進できる関係をつくることが、本来のリーダーシップです。ミニサマリー:リーダーの役割は命令ではなく、協力を自発的に引き出すことにある。 Q2: リーダーの「人への姿勢」はなぜ組織文化を左右するのか? 心理学者マクレガーは「人の見方が組織文化を決める」と指摘しました。リーダーが部下の欠点ばかりを見れば、チーム全体が萎縮します。逆に、可能性や強みに目を向けるリーダーの下では、人は挑戦し成長します。もちろん、人は誰しも不完全で、恐れや欲を抱えています。だからこそ、ピンチのときに本当の姿勢が試されるのです。混乱の中で落ち着きを演じられる「演技力」もまた、リーダーの力です。偏見や感情を抑え、冷静に人と向き合えるかが、組織の未来を決定づけます。ミニサマリー:リーダーの人間観がチームの文化を形成し、挑戦や成長を可能にする。 Q3: 組織の目標と個人の目標はどう結びつけるのか? 理想的な組織は、全体の目標と個人のキャリア目標が矛盾せず共存している状態です。しかし現実には、リーダー自身の目標ばかり優先されがちです。優れたリーダーはメンバー一人ひとりの動機や目標を理解し、それを支える環境を整えます。この調整には時間もエネルギーも必要ですが、その努力こそが「人を育てるリーダー」を際立たせます。細やかな対話と粘り強い調整を通じて、組織と個人の目標をつなげたとき、チームは最大の力を発揮します。ミニサマリー:人を育てるリーダーは、組織と個人の目標を対話と調整で結びつける。 Q4: 失敗から人を育てるのはなぜ重要なのか? 成長もイノベーションも、失敗の繰り返しからしか生まれません。「反面教師」という言葉があるように、他人だけでなく自分の失敗からも学ぶことができます。大切なのは、自分の失敗には寛容で、部下には厳しいという二重基準を避けることです。叱るなら自分にも同じ基準を適用する。その誠実さが信頼を築きます。リーダー自身が「失敗ではなく学びだ」と捉えることで、部下にも挑戦の勇気を与えられるのです。ミニサマリー:失敗を学びに変える姿勢を示すことで、リーダーは信頼と挑戦文化を育てる。 Q5: リーダーは自分の「空気」を読めているか? 「空気を読む」という表現がありますが、リーダーに必要なのは場の空気だけでなく、自分自身の「内面の空気」を読む力です。焦りや不安を無意識に周囲へ伝えていないか? 今どんな気持ちでチームと向き合っているのか? こうした自己内省は、リーダーの大事な仕事の一つです。ミニサマリー:リーダーは自分自身の内面の空気を読み直すことで、チームへの影響を整える。 最後に:本質を忘れないために リーダーシップの4つの視点は一見当たり前のようですが、日常の忙しさの中でつい見失いがちです。だからこそ、立ち止まり、自分を振り返る時間を意識的に持ちましょう。厳しい状況ほど、この姿勢がリーダーとしての真価を決めるのです。 デール・カーネギー・トレーニングは、1912年に米国で創設され、100年以上にわたり世界各国でリーダーシップ、セールス、プレゼンテーション、コミュニケーション、エグゼクティブ・コーチング、そしてDEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)の分野で個人および企業向けの研修を提供してきました。 東京オフィスは1963年に設立され、日本企業および外資系企業の皆さま、さらには個人の方々の成長もサポートし続けています。単なるスキルトレーニングではなく、組織文化...
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  • 126 ポッドキャストインタビューを効果的に行う方法
    Aug 14 2025
    メディアのインタビューに関しては、多くのビジネスパーソンにとって滅多に経験することではありません。このような場では、適切に対応するためには非常に専門的なスキルセットが求められます。素人のビジネスリーダーが、経験豊富なジャーナリスト相手にインタビューを受けると、あまり良い結果にならないことがほとんどです。 しかし、最近では多くのビジネスパーソンが、プロのインタビュアーではないポッドキャストのホストからインタビューを受けています。こうしたインタビューは、いわゆる「揚げ足取り」タイプではないことが多いものの、世界中に配信される可能性があるという点では変わりません。私たちは、プレゼンをするたびに、自分自身の個人ブランドとプロフェッショナルブランドをさらしているということを忘れてはいけません。 それでは、ポッドキャスト番組でのプレゼンテーションをどのように準備すれば良いでしょうか?以下のポイントを参考にしてください。 ポッドキャストの前に ホストのリサーチをする ホストは誰なのか?何をしてきた人か?なぜこのポッドキャストをやっているのか?ゲストは基本的に、番組に知的コンテンツ(IP)を提供する存在です。ホストがその分野について知識がある場合もありますが、通常はゲストが専門家だから呼ばれているのです。番組の構成を確認する ホストが一人か複数かによって、対応の仕方が変わります。複数ホストであれば、事前のリサーチが特に重要です。番組のスタイルを知る 過去のエピソードを聞いて、ホストがどんな風にゲストと接しているか、質問のタイプ、進行スタイルなどを確認しましょう。聞き上手か、頻繁に話を遮るタイプかも大切です。たとえば、私自身はハワード・スターンの番組が好きではありません。彼はゲストの話をすぐ遮るので、視聴者としてとても不快に感じるからです。音声のみか、映像付きかを確認する 最近は映像付きのポッドキャストも増えてきました。これは、どんなイメージを視聴者に与えるか、どのような服装をするべきかを決めるうえで重要です。ホストがカジュアルな服装でも、自分のブランドに合った服装を選ぶべきです。私の場合は「常にプロフェッショナル」がブランドなので、スーツにネクタイ、カフス付きのシャツ、カフリンクス、腕時計、チーフが基本です。ホストの服装は気にしません。それは彼らのブランドです。事前に質問リストがもらえるか もしもらえるならとても有益です。定番の質問をいつも使っている番組なら、過去のエピソードから質問内容を予測することもできます。番組の配信方法を確認する 編集権が自分にあるのか、ないのか?多くのポッドキャストはプラットフォームを通じて世界中に配信されます。つまり、あなたのブランドが何万人もの目に触れる可能性があるということを理解しておく必要があります。 インタビュー中に メディアトレーニングでは、答えを短くするよう教えられる 短い回答の方が誤解を招きにくいからです。不誠実な記者により、発言が切り貼りされ、文脈を無視した「炎上」的な内容にされることがあります。メディア業界では、論争が注目を集めるということが知られています。  一方、ポッドキャストは1時間ほどの長尺番組が多いため、つい長く話してしまいがちです。質の高い話であれば長くても構いませんが、ただ冗長に話すだけなら、ブランド価値を下げる結果になります。 すぐに答える必要はない 編集が入るので、長く考える間があっても問題ありません。納得いかない答えをしてしまったら、「やっぱり違う」と言って撮り直せば良いのです。映像付きの番組であれば、メモを見るのは避ける 必要ならカメラに映っていないタイミングで確認し、編集でカットしてもらえるようにしましょう。インタビュー中に視線を外すと、プロ意識に欠けて見えてしまうことがあります。カメラを見るのではなく、ホストを見て話す 映像付きの場合、基本的にはホストとの対話に集中しましょう。カメラを見るのは、最初と最後、ホストが視聴者に直接語...
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  • 125 法医学的営業質問スキル
    Aug 3 2025

    多くの営業担当者は、クライアントに会うとすぐに自分のプレゼンに入ってしまいます。買い手が何を望んでいるのか、何を必要としているのか、あるいは何に関心があるのか、そうしたことを一つも尋ねることなく話し始めるのです。「狙っていない的に当てるのは難しい」ことは明白です。もし「成約」が目的なら、買い手が何らかのニーズを持っていなければ、お金を払ってもらう理由がありません。相手のニーズに沿って会話を進めていないのであれば、的を狙えておらず、買い手の行動を促すことはできないのです。

    買い手に質問をするという概念自体は、決して複雑なものではありません。とはいえ、日本にはちょっとした難しさがあります。というのも、日本では営業が買い手に質問するのは「失礼」とされる風潮があるからです。そのため多くの営業は、質問する機会を放棄し、いきなりプレゼンに入ってしまうのです。これは、いわば"信仰的"な問題です。日本では買い手は「神」であり、「神」は凡人からの質問など受け入れない、というわけです。

    買い手に質問することは、多くの営業パーソンが苦手とする部分ですが、正しい方法で丁寧にアプローチすれば、むしろ買い手も前向きに応じてくれます。そのためには、4つのステップが有効です。まず、自社が何をしているのか簡潔に説明し、次に、他のクライアントへの具体的な成果(数字を含めた実績)を紹介します。そのうえで、「同様の価値を御社にも提供できるかもしれません」と伝え、最後に「それを確かめるために、いくつか質問させていただいてもよろしいですか?」と丁寧に依頼することが大切です。

    多くの日本の買い手は、このようなアプローチに理解を示してくれます。プレゼンを求められるケースも稀にありますが、大半は質問の許可を得られるでしょう。そして実は、こうした質問の準備は、面談のはるか前から始まっているのです。つまり、「訪問前の事前準備」が非常に重要なのです。

    ところが多くの営業担当者は、この準備を怠りがちです。準備されたプレゼンを読み上げるだけならそれでも問題ないかもしれませんが、相手のニーズを深く理解して提案を行うためには、業界や企業についての事前調査は欠かせません。もしその業界に詳しくない場合は、競合や市場動向、企業の公開情報(特に上場企業なら年次報告書など)を調べておくとよいでしょう。ここでの目的は、「面談でどんな質問をするべきか」を明確にするための情報収集です。

    調査で得た情報を元に、「グローバル戦略は日本市場でどう機能しているか」「競合他社の動きが御社に与える影響は?」など、的を絞った質問が可能になります。未上場企業でも、競合状況や業界動向をもとに間接的に質問することで、相手の現状を引き出せます。

    営業の目的は、買い手の現状(As Is)と理想(Should Be)の間にあるギャップを見つけることです。このギャップがあるからこそ、自社の提案が価値を持ちます。もしギャップが小さい、もしくは買い手が「自社で十分に対応できる」と考えている場合は、営業のチャンスは少ないでしょう。そのため、「理想を妨げている要因(Barrier)」や、「理想が実現したときの意味(Payoff)」などを丁寧に聞き出すことが重要です。

    また、多くの営業パーソンが「質問を1回だけしてすぐ次に進んでしまう」という誤りを犯します。買い手の回答に対して「なぜ?」と一歩深掘りすることで、相手の考えや課題がより明確になります。この「なぜ?」を繰り返す際には、押しつけがましくならないよう、やわらかく好奇心を持ったトーンで行うことが大切です。

    こうした深掘りによって、買い手は自らの戦略を再評価し、普段気づかない課題や機会損失に気づくことができます。営業側としても、より本質的でパーソナライズされた提案が可能となり、単なる製品説明とは一線を画す、効果的な営業手法となるのです。

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