ここ40年で寺のようすは大きく変化しました。
かつてお葬式は、住み慣れた自宅で行われました。上座敷を開け、タンスなどを移動し、障子やふすまを外し、親戚総出で片付けをしなければならなかったものです。しかし、いまではセレモニーホールなどで行われることが当たり前になり、役付きの人たちが葬列を組んでいく野辺の送りもなくなりました。
また、20数年前まで行われていた土葬の葬送はなくなり、すべて火葬に変わりました。それにともない、お墓のようすも変わりました。平成7年ごろまでは埋葬した上に石碑を建てたものですから、基本的には個人墓の石碑が建てられていました。しかし今では先祖代々の石碑が主流となり、その中に納骨する祀り方に変わってきています。
さらに法事は、この田舎でも専業農家の減少とともに勤め人が多くなって日曜日や祝日に集中し、休日に2軒以上が多くなったため、斎(とき)という食事に同席することがなくなりました。
そして深刻なのは高齢化です。檀家さんも高齢の一人住まいとなり、坊主の方も後継者不足で高齢化しているのです。
お寺の世界もこれからはITの時代となり、思わぬ変化をもたらすのかもしれません。しかし、時代は変わっても近くのお寺で般若心経と向かい合いお写経がしたい、少し心が疲れてくればお坊さんと話がしたい、仏事についても聞いてみたいなどの要望に応え、お寺を心のよりどころとして常に開放していかなければならないことはいうまでもありません。
自坊不動寺では、平成17年から「土寺小屋」という寺子屋をはじめました。土曜日に開催する寺子屋ということで「土寺(どてら)小屋」と名付け、いまは15人ぐらいが来てくれています。寺子屋といえば対象が子どもというイメージですが、こちらはほとんどが大人の方です。「土寺小屋」ではお写経を中心にして般若心経の解説や、お釈迦さまの話し言葉で書かれた原始経典である「法句経」の解説、世間ばなしなどもまじえ法話をおこないます。
「土寺小屋」でには途中、御弥津(おやつ)の時間もあり、この御弥津は住職や副住職が手づくりしたものをお接待しています。いままで60種類以上のオリジナルの御弥津が提供されました。手づくりのオリジナルですから、これを考えるのに大変苦労しますが、小屋生にとってみれば土寺小屋での楽しみの一つでもあるようですから、これからも頑張ってつくっていこうと思っています。
ここ40年で寺のようすが大きく変化したとはいいながら、当初、強い拒絶反応を示した坊主という仕事が一番相性よく、自分に合っていたように思えることが、私にとって最大の変化だったような気がするのです。
合掌