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ボロ家の春秋

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ボロ家の春秋

Written by: 梅崎 春生
Narrated by: 浅倉 歩
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五味司郎太は、都電の中で紙入れをスラれかかった男を救った。赤穂浪士の一人不破数右衛門の末孫不破数馬と名のるその男はその晩お礼に五味を自分の邸宅に泊めた。それが縁となって、彼はこの邸の一間を権利四万で借りることになった。ヴァイオリン弾きの彼は、この大金を高校事務員の恋人浪子から、ヴァイオリンをカタにトイチの約束で借りた。赤穂で県会に立候補すると称して、不破が姿をくらました後、この家を買う約束をして不破に手付けを打ったという野呂なる人物が引越して来た。彼は浪子の学校の教師で、彼女に想いをよせている男である。野呂と五味が借家権、居住権でいざこざを起している折、今度は陳根頑と称する中国人がやって来た。善後策の相談ということで、野呂、五味、浪子は陳の経営する文福飯店に招かれた。へべれけに酔った浪子にせかれて、二人は陳の持ち出した書類に捺印してしまった。この書類、貸金のカタに陳が邸を差し押えるというものだった。そこへまたサカエという女が引越して来た。彼女は野呂の学校の校長の二号だったが、お払い箱になり、先住者立退きを条件に不破からこの家を買ったという。そんな時、不破の消息が分った。サカエのお色気戦術に乗せられた五味と、それを怒って反動的に親しくなった野呂に頼まれた浪子の二人は、赤穂へ駈けつけた。そこには陳の手下である孫伍風も来ていた。三人三様の手管で権利証を不破から受けようとしていた時、不破がサギ罪の容疑で刑事にあげられてしまった。がっかりした五味と浪子が戻ってみると、留置中の不破から権利証を貰って来たという陳が、皆に立退きを迫って来た。ところが都の建築課員が来て言うには、老朽して保安上危険だからというので家は取りこわしになるというのである。家も土地も、所有権は都に移っていたのだ。陳が不破から貰ったという権利証も偽物だった。騒ぎがおさまって、五味と浪子が元のサヤにおさまったのは勿論だが、サカエが野呂と結婚してみようと言い出したのはオドロキであった。Public Domain (P) 2016 Audible, Inc. Literary Fiction World Literature
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