一房の葡萄
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Narrated by:
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西村 健志
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Written by:
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有島 武郎
About this listen
「僕」はあるとき、衝動に駆られてジムの絵の具を盗んだ。しかしすぐに知られて、大好きだった先生に言いつけられてしまった。恥ずかしさや後悔などが混じりただ泣き続けていた「僕」を、先生は優しく許してくれて、一房の葡萄をくださった。
「僕」は翌日学校に行くと、待っていたジムが手を引いて先生のところへ連れて行ってくれた。先生は一房の葡萄を分け与えてくださり、「僕」とジムは仲直りすることができた。
「僕」はあれから少し大きくなり、秋にはいつでも葡萄が美しく実るけれども、あの日葡萄をくださった先生の美しい手は、もうどこにも見つからない。
一房の葡萄は有島武郎の創作童話。子どもたちの誰もが持っている欲求や悲しみ、恥ずかしさといった気持ちを、有島本人の幼少期の体験に基づいて描写しています。
あのとき絵の具を盗んだりしなかったら…
あのとき盗んだことが露呈しなかったら…
あのとき先生が仲直りさせてくれなかったら…
僕はいまどうなっているのだろうか。幼少時代を回顧して現在の自分のあり方を思う、誰しもが心に持つ疑問を投げかけています。
盗むのは悪い、恥ずかしいことだと知ってもらうことは大切です。ですがそれだけでなく、どうして盗んだのか、どうして絵の具が欲しかったのか、その気持ちを知ってあげることも大切だということが、先生の優しさに現れています。
大人には、自分を振り返り、懐かしい気持ちにさせてくれる。子どもには、良いこと悪いことだけでなく、気持ちを知ることの大切さを教えてくれる。大人にも子どもにも、一度は聴いて欲しい名作です。
(c)2017 Pan Rolling
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