暗黒星
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江戸川 乱歩
About this listen
震災の被害を免れた東京の麻布区K町は、自然に朽ち果てた建物や草原や苔むした煉瓦塀などが点在する、大都会の廃墟のような土地であった。そこには伊志田鉄造という資産家が暮らす西洋館があった。
災厄の前兆となったのは、長男一郎の夢だった。彼は立て続けに家族が殺される夢を見たのだという。また屋敷内では部屋の小物が勝手に移動していたりなどの異変が起こっていたのだった。
一郎は探偵である明智小五郎に相談するのだが、明智としても、まだ夢の段階でどうこうということも出来ず、興味はあっても、ただ気に留めていただけであった。
ところが、明智のもとに一郎から助けを求める電話が掛かってきた。短刀を持った怪しげな男に今まさに殺されようとしているのであった。今から向かっては間に合わないと悟った明智は、電話口から少しでも様子を探ろうとした。悲痛なうめき声に続いて電話から聞こえてきたのは、妙な枯れ声だった。
「お前は明智だね……ウフフフ……間に合わなくて気の毒だったねえ……」
明智はすぐさま現場に向かうため、助手の小林少年に車を手配させるのだが……
<著者紹介>
江戸川乱歩(えどがわ・らんぽ) 日本の推理小説家。1894年10月21日生まれ、三重県生まれ。筆名は、19世紀の米国の小説家エドガー・アラン・ポーに由来する。数々の職業遍歴を経て作家デビューを果たす。本格的な推理小説と並行して『怪人二十面相』、『少年探偵団』などの少年向けの推理小説なども多数手がける。代表作は『人間椅子』、『黒蜥蜴』、『陰獣』など。1954年には乱歩の寄付を基金として、後進の推理小説作家育成のための「江戸川乱歩賞」が創設された。©2019 PanRolling.
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