登場人物 ・女性(36歳/29歳)・・・IT企業でWebデザイナーをしている。彼とつきあって7年目(CV:桑木栄美里) ・男性(34歳/27歳)・・・大手弁護士事務所で働くジュニアアソシエイト (CV:山崎るい) <女性36歳/男性34歳> (SE〜街角の雑踏) 男性: 「転勤!?」 女性: 「うん・・・」 男性: 「・・・いつから?」 女性: 「来月・・・」 男性: 「・・・そっかぁ・・・で赴任先は?」 女性: 「L.A.」 男性: 「え・・・」 女性: 「うちの会社、来月L.A.ブランチをオープンするの」 男性: 「・・・そう・・・」 女性: 「私、あなたと出会う前から、海外勤務の希望を出してたんだ」 男性: 「じゃあ、願いが叶ったんだね」 女性: 「うん。でも・・・」 男性: 「よかったじゃないか」 女性: 「え・・・」 男性: 「お祝いしなきゃ。盛大にやらないと」 女性: 「・・・うん・・・」 男性: 彼女から告げられた、突然の海外赴任報告。 実は、僕にはまるで死刑宣告のように感じられた。 <女性29歳/男性27歳> (SE〜インテリアショップ店内) 男性: 彼女と初めて出会ったのは、いまから7年前。 インテリアショップで、僕がオフィスに飾る絵を探していたときだ。 オフィスと言っても、小さな弁護士事務所。 僕は27歳だったけど、弁護士になりたて、1年目のジュニアアソシエイトだった。 立ち止まって眺めていたのは、モンローをコラージュしたキラキラ系の絵画。 怪しく微笑むブルーグレイの瞳に、僕は長いあいだ、魅入られていたんだ。 女性: 「うふふ・・・」 男性: 小さく、控えめな笑い声で、僕は我に帰った。 男性: 「あ・・・」 女性: 「あら、ごめんなさい。笑うつもりはなかったんだけど」 男性: 彼女は、大手IT企業に務めるWebデザイナー。 僕よりふたつ年上の人気クリエイターだった。 女性: 「私もモンローは好きよ。 ノーマ・ジーンの方がもっと好きだけど」 男性: 「あなたもインテリアを探しに?」 女性: 「そう。私をゆっくり眠らせてくれるインテリアをね」 男性: 聞けば、仕事は多忙を極め、睡眠不足の毎日。 安眠できるベッドを探しにインテリアショップへきたのだという。 女性: 「睡眠導入剤に頼るのはいやだから」 男性: 僕も彼女も、もちろん、リアルなモンローはしらないけれど、 セクシーな笑顔にはお互い共感していた。 イヴ・モンタンには程遠かったけど、 1960年の映画「恋をしましょう」のように、僕たちの物語ははじまった。 気がつけば、あっという間に7年という月日が流れていた。 (SE〜街角の雑踏) 女性: 「おまたせ」 男性: 「行きたいところ、ある?」 女性: 「枕とマットレスを見に行きたい」 男性: 別に意識しているわけじゃないんだけど、 僕たちのデートスポットはなぜかいつもインテリアショップ。 今日も、コイルスプリングという素材のマットレスに出会って 彼女のテンションはどんどんあがっていく。 ベッド、枕にシーツ、かけぶとん・・・ 彼女の睡眠環境がみるみる充実していく。 一緒にインテリアを見てまわるうちに、 いつしか、彼女との未来を思い描くようになっていった。 「七年目の浮気」 じゃあないけれど・・・ 七年目のある日、L.A.転勤という判決がいきなりつきつけられてしまったんだ。 (SE〜レストランの雑踏/ワイングラスの乾杯の音) 男女: 「乾杯」「乾杯」 男性: 「ねえ・・・ひとつだけお願いがあるんだ」 女性: 「・・・なあに?・・・引き止めるならいまよ」 男性: 「え?」 女性: 「やだ、真剣な顔。冗談に決まってるじゃない」 男性: 「だよね・・・あの、僕たち・・・」 女性: 「え・・・」 男性: 「僕たち、これから毎年、この日に会わないかい?」 女性: 「この日・・・星祭(たなばた)の日?」 男性: 「そ、牽牛・織女の逢瀬のように」 女性: 「雨が降ったらどうするの?」 男性: 「カササギにお願いすればいい」 女性: 「そのときは私がカササギになってあげる」 男性: 笑顔のなかに変わらぬ思いを確信したいま、 僕はやっと、彼女のL.A.行きを誇らしいと感じた。 僕たちの道はまだ、未来へ続...