• ボイスドラマ「変わらないもの/父のソファ」前編

  • Feb 1 2025
  • Durée: 7 min
  • Podcast

ボイスドラマ「変わらないもの/父のソファ」前編

  • Résumé

  • 登場人物 ・娘(8歳/25歳)・・・インテリアコーディネーター/セレクトショップで新ブランド立上げの責任者に抜擢されている(CV:桑木栄美里) ・父(52歳/69歳)・・・全国展開する半導体チップメーカーの社長/かつては町工場の工場長だった/少し強面だが心根は優しくて娘思い(CV:日比野正裕) <娘8歳/父52歳> 父: 「よいしょっと」 (SE〜ソファに座る音/キッチンで洗い物をする音=オフで) 娘: 夕食のあと、キッチンで洗い物をする母に背を向け、 リビングのソファにどっしりと座る父。 父: 「ニュースはまだかな・・・」 (SE〜テレビのリモコンを操作する音) (BGM〜fsharp-maj-arpeggio-300270424) 娘: 3人がけのソファは、身長180cmの父が座るととても小さく見える。 小柄な私が一人で座ると、背もたれが視界を遮り巨大な壁となる。 ”なんて大きいソファなんだろう”っていつも感じていたのに。 いつものことだけど、いつも不思議だった。 父: 「お、今日はクイズか!」 娘: 父はTVを見るのが大好き。 仕事から帰ってきてみんなでご飯を食べた後には、 いつものソファで夜遅くまでTVを見る。 ニュース番組、バラエティ番組、スポーツ番組、何でも見て、 何にでも大きな声で答えていた。 父: 「鹿児島県で2番目に大きい島・・・2番目に大きい島は・・・ 屋久島!」 (SE〜テレビの中の音「ピンポンピンポン!」) 娘: 私の方を振り返って口元が綻ぶ。 そして、いつものように、 父: 「こっちにおいで。一緒に見よう」 娘: 私は満面の笑みで父の隣へ飛び込み、並んでテレビを見る。 それは私にとって、至福のひととき。 リビングに響き渡る父の声は、家族を照らす灯りだった。 父: 「明日、みんなでまた家具屋さんに行こうか」 娘: そう言ったあと、気がつくと横から父の寝息が聞こえてくる。 振り向けば、キッチンの母は人差し指を口にあてて笑っている。 この時間が私は一番好きだった。 (SE〜インテリアショップの雑踏) (BGM〜liberosis-347011530) 娘: 私がインテリアコーディネーターになったのは、 父も母もインテリアが大好きだったから。 父は時間があると私を家具屋さんへ連れていった。 娘: 「わあ」 父: 「いろんな家具があって楽しいだろう」 娘: 「うん」 父: 「じゃあ座って目を瞑って。 その家具たちに囲まれた暮らしを想像してごらん」 娘: 「う〜んと・・・」 父: 「そばにパパやママやお姉ちゃん、お兄ちゃんは見える?」 娘: 「うん、見える」 父: 「みんな、笑ってるかい?」 娘: 「笑ってる」 父: 「じゃあ、その家具はいい家具だ」 娘: 「そっかぁ」 父: 「やっぱりおまえは見る目があるなあ(笑)」 娘: その思いは(インテリアコーディネーターになった)今でも変わらない。 自然と笑顔が集まってくる家具たちを、私は提案し続ける。 かつて父は町工場を経営し、妻と子供3人を守るために毎日必死に働いた。 毎日疲れていただろうに、週末は必ず私たちをドライブに連れていく。 勉強しろと言われたことは一度もない。 唯一厳しかったのは「礼儀」と「言葉」。 それもこれも、社会人になったいま、私をかたちづくる素養となっている。 <娘25歳/父69歳> (SE〜玄関をあける音) 娘: 「ただいま」 父: 「おかえり。遅かったな」 娘: 「いま、セレクトショップの新ブランド立上げで忙しいのよ」 父: 「ごはんは?」 娘: 「食べてきた」 父: 「そうか、じゃあとりあえずソファで休みなさい」 娘: 「うふふ・・」 父: 「なんだ?」 娘: 「変わらないなあ、と思って」 父: 「なにが?」 娘: 「ソファも。パパも」 父: 「なぁに言ってるんだ」 (BGM〜インテリアドリーム) 娘: つい最近、ソファの皮を新しく張り替えた。 新しい皮の匂いがするソファの真ん中に、今日も父はどっしりと座る。 その横で、私が父にもたれ気味に座る。 社会に出て目まぐるしく変わる毎日のなかで 変わらない日々の幸せが、そこにはある。
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