Épisodes

  • 大統領令の経済に対する潜在的な影響
    Jan 22 2025
    債券・米国公共政策戦略担当グローバル責任者のマイケル・ゼザストランプ大統領は就任初日から大量の大統領令に署名し、選挙公約を実現する意思を示しました。トランプ大統領が実現しようとする政策が経済におよぼし得る影響について、債券・米国公共政策戦略担当グローバル責任者のマイケル・ゼザスが詳しく掘り下げます。 このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。債券・米国公共政策戦略担当グローバル責任者のマイケル・ゼザス. 本日の話し手は、債券・米国公共政策戦略担当グローバル責任者のマイケル・ゼザスです。貿易政策を巡る不確実性が市場のボラティリティを高めている見方に関する自身の見解をお話しします。 このエピソードは1月22日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 今週月曜、米国大統領にドナルド・トランプ氏が再就任しました。それから数日、私たちの下には、大量に署名された大統領令や報道陣の質問に対する氏の答が示唆する経済や市場への影響を知ろうと考える、言い換えるなら、関税、税制、その他政策が変わるとすれば、いつ、どのように変わるかに関するシグナルをノイズの中から見極めようとする投資家からの質問が殺到しました。投資家のこうした動きは理解できるものです。この番組でも何度かお話しした通り、米国の公共政策動向は、世界経済および市場の見通しに大きな影響をおよぼすからです。米国の公共政策の道筋に関する私たちの見通しについては、本番組でもいくらか時間を割いて説明してきましたが、例え、貿易、税制、移民、その他政策が変わるタイミングとそれらの影響の度合を正確に予測できたとしても、市場はそれらに合わせて予測通りには動かないという見方を皆様には理解して頂きたいと思います。なぜなら、トランプ大統領とその政権閣僚たちは、自分たちの政策戦術について確たる裏付けもなく、憶測に基づいて公に語ることが多いからです。その発言からは尤もらしい結果を幅広く想定でき、結果として投資家の間で先行きの見通しを巡る混乱が広がっています。例えば関税政策。大統領は月曜日にアメリカ・ファーストの貿易方針を発表し、財の貿易赤字縮小と、貿易に関連した経済および国家安全保障懸念の排除を促す政策ソリューションを政府全体で立案するよう指示しました。また、こうした貿易方針を促す有効な手段として関税を挙げ、関係当局に国/地域および製品別に関税案を策定するよう指示しました。平たく言えば、関税の即時引き上げはしないものの、大統領は自分の望む時期や方法で任意に関税を引き上げる選択性を最大化しようとしているように見えます。こうした動きは、メキシコ、カナダ、中国への追加関税に関する報道陣からの質問に対する大統領の発言を含め、例え最終的に実現にしなかったとしても、関税引き上げやそのタイミングに関するあらゆる公的発言を真剣に受け止める必要に市場が迫られていることを意味します。例えば、現時点で私たちはメキシコとカナダへの追加関税は実現しないと考えていますが、それも予断を許さない見方であることに変わりはありません。そのように選択性が最大化されれば、市場の短期的な動きからは多様な結果を幅広く想定することができるようになります。例えば米国債市場。弊社エコノミスト・チームは、関税引き上げとその他いくつかの要因によって2026年の経済成長ペースは鈍化すると予想しており、私たちはこの予想に基づき、米国債利回りは同年末に向けて低下すると考えています。ただし、それまでの動きを見ると、利回りは最初のうちは確実に上昇するでしょう。同僚のマット・ホーンバッハが指摘するように、関税引き上げの脅威は、一時的なインフレによるFRBの利下げペース鈍化を市場が織り込む可能性を高め、これを懸念した投資家の動...
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  • 2025年アジア見通し
    Jan 21 2025
    アジア担当チーフエコノミストのチェタン・アハヤ 2025年は関税、ドル高、内需の強さがアジアの経済成長を左右することを弊社アジア担当チーフエコノミストのチェタン・アハヤが解説します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。アジア担当チーフエコノミストのチェタン・アハヤ. 今回はアジア担当チーフエコノミストのチェタン・アハヤが2025年のアジア経済を方向づける3大テーマについて解説します。 このエピソードは1月21日 に香港にて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 まず全体像から始めると、弊社では2025年のアジアの成長率が昨年の4.5%から4.1%に減速すると見ています。ただ、アジア全体がいくつもの課題と機会に直面し、その影響でこの予想は大幅にぶれる可能性があります。弊社は特に3つの要素に着目しています。ひとつは関税です。今年は関税が弊社最大の関心事です。関税の導入ペース、規模、対象地域によってどの程度成長の足枷となるかが決まるでしょう。弊社の基本ケースでは、アジアでは25年上期から段階的に中国に対する関税が導入されると想定しています。弊社の米国公共政策責任者のマイケル・ゼザス が述べているように、関税は早期に発表されるものの、導入には時間がかかるでしょう。 なお、関税と貿易を巡る緊張は過去にもあったことから、企業心理は2018-2019年ほどには悪化しないと思われます。ただし、貿易緊張がエスカレートすれば大きなリスクとなります。例えば、米中間以外にも二国間の貿易紛争に発展したり、米国がすべての輸入品に関税を課すといった事態が考えられます。対米の貿易黒字が大きい上位10カ国のうち7カ国はアジア諸国であることから、アジアは最も大きな影響を受けるでしょう。このようなリスク・シナリオのいずれかが現実となった場合、2018-2019年のような成長ショックに再び見舞われる恐れがあります。 次に、FRBとドルについて考えてみましょう。FRBはタカ派姿勢に転じ、弊社の予想では2025年の利下げは2回にとどまる見通しで、アジア諸国の中央銀行は苦しい立場にあります。FRBはインフレを懸念して慎重な姿勢をとっており、貿易政策と財政政策の変更によりインフレは悪化する可能性があります。このためドルは高くなっており、逆にアジア通貨は下落しています。したがって、アジアの中央銀行はインフレ率が適切なレンジであるにもかかわらず、積極的な利下げが制約されます。 3つ目に、良好な外部環境は期待できそうにないことから、アジア主要国の内需がアジアの成長見通しの頼みの綱となるでしょう。弊社はインドと日本の見通しは良好だと考えますが、中国については慎重に見ています。 中国は行き過ぎた投資と過剰生産能力が原因でデフレに直面しています。この解決策として、当局は5%の成長目標を達成する手段として消費の比重を高める必要があります。すでにいくつかの対策が講じられ、今後も新たな対策が出てくると思われますが、中国が消費の伸び率を大幅に引き上げるためにはこれらの対策で十分なのか、弊社は疑問視しています。弊社の見るところ、現在も投資が重要な成長ドライバーであり、関税が導入されれば現在のデフレ圧力がさらに増すものと思われます。インドと日本は内需に追い風が吹き、外部からの逆風が打ち消されると考えています。インドは政府の資本的支出、金融緩和、サービス輸出の加速に支えられ、力強い回復が見込まれます。このためGDP成長率は6.5%の軌道を回復する見通しです。日本では実質賃金と消費の伸びが再び加速して、日銀がインフレ見通しに自信を深める結果、2025年に2度の利上げを実施すると弊社は見ています。今週はトランプ政権の幕開けです。私も同僚もこれを注視しており、新政策がアジアに及ぼす影響について今後も最新情報をお届けする所存です。最後までお聴...
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  • 2025年の4つの重要な投資テーマ
    Jan 15 2025
    債券・米国公共政策担当グローバル責任者のマイケル・ゼザス 債券・米国公共政策担当グローバル責任者のマイケル・ゼザスが弊社の重要なテーマである脱グローバル化、長寿化、エネルギーの未来および人口知能が2025年、そしてそれ以降にどのように進展するかについて解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。債券・米国公共政策担当グローバル責任者のマイケル・ゼザス. 今回は、債券・米国公共政策担当グローバル責任者のマイケル・ゼザスが、弊社が2025年に注視する重要な投資のメガトレンドについてお話します。このエピソードは1月15日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。投資においては、短期的なトレンドが目先の市場の動向に関する貴重な洞察を提供することがあります。しかし、本当の意味で投資環境を形成するのは長期的なトレンドです。常に変わり続ける世界で、弊社が毎年、長期的な投資機会を提供すると目されるメガトレンドの候補を絞り込むのはこのためです。 弊社が選んだメガトレンドのうち、人工知能、長寿化、エネルギーの未来の3つは、昨年から持ち越されたものです。4つ目の世界経済の再構成は、2024年のリストから抜けた後、復活したものです。いずれも全く新しいものではありませんが、それぞれ投資戦略への適用方法が異なります。 まず、「多極化世界」に合わせた世界の商取引の再構築について見てみましょう。先に述べたように、こちらは昨年1年間テーマから外れた後、弊社が選ぶ重要なメガトレンドとしてリストに復活しました。なぜでしょうか?手短に言えば、世界の政策担当者は、冷戦後のグローバル化トレンドの崩壊を加速させる政策を実行しようとしていることが明白だからです。端的に言って、政策担当者は、商取引の規制強化とサプライチェーンおよび重要技術に対する国内主導権の強化を通じて、目指す国家と経済の安全保障を促進しようと考えています。多国籍企業や国家はこの現実への適応を急ぐ必要があるかも知れません。他者よりも厳しい選択を迫られる者がある一方で、この移行を助けることでまだ恩恵を受ける者もあるでしょう。誰がどのカテゴリーに属するか、そしてこの新しい現実がどのように進展するのかを知ることが、投資家にとって極めて重要になると考えられます。 次のテーマである長寿化は、長期的、構造的なトレンドであることに変わりなく、今年は政府、経済、企業に与える重要な影響が焦点になると見られます。人口高齢化の波及効果、健康長寿志向および少子高齢化の課題が多くの地域で引き続き市場に影響を及ぼしています。2025年は投資家が長寿化の具体的な論点のいくつかに注目すると予想しています。第1は、引き続き肥満症治療をはじめとしたAI関連を中心とする医療全般のイノベーションです。第2は、手頃な価格の栄養摂取志向を含む消費行動への影響です。第3は、特に定年が引き上げられる場合、高齢化する労働者に対するリスキリングの必要性があることです。そして、もう一点は、ファイナンシャル・プランニングおよび定年退職へのインプリケーションです。金融アドバイザリー業務の強気相場が始まりつつあります。 次のテーマはエネルギーに関するものです。エネルギーの未来について考える際、2025年は弊社の注目点が脱炭素から、すべての地域における供給、需要およびエネルギー送達を左右する幅広い要素にシフトします。そして、その共通点は、急速に展開する可能性です。弊社が追跡している重要な動向は次の4つです。第1は、エネルギー安全保障に対する注目の高まりです。第2は、数兆ドルのAIインフラ投資に牽引され、火力発電と再生可能エネルギーの両面から対応する、エネルギー需要の大幅な拡大です。第3は、炭素回収、エネルギー貯蔵、原子力発電および送電網の最適化...
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  • AIの進化における機会を発見する
    Jan 14 2025
    テーマリサーチ担当グローバル責任者のエド・スタンレー 弊社テーマリサーチ担当グローバル責任者のエド・スタンレーが、人工知能がどのように変化しているのか、投資家は2025年に何に備えるべきかについて、解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。テーマリサーチ担当グローバル責任者のエド・スタンレー今回は、テーマリサーチ担当グローバル責任者のエド・スタンレーが、AIエージェントの年となる今年、AIの変化率への理解がどのようにアルファの創出につながるのかについて解説します。 このエピソードは1月14日 にロンドンにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 仕事や家庭で人口知能を利用したことがない方でも、その能力については間違いなく耳にしたことがあるでしょう。例えば、100ページのレポートを30秒で説明できるように要約する作業を例にとると、これは絶好調の時でも退屈な作業であることに間違いありません。しかし、AIモデルはこれをさらりとやってのけるだけでなく、あなたが希望すればポッドキャストも作成して配信してくれますし、想定されるほとんどの言語で作成できるのです。しかし、今回はそもそも、そのアルゴリズム自体が、企画や実行といった複数段階のプロセスを通じて思考し、100ページのレポートそのものを自分で作成するようになったと想像してみてください。これが、エージェンティックAIの一例です。 その名前から分かるように、AIの次の発展段階ではソフトウェア・プログラムが主体性を獲得し、これまで利用されてきた状況に対応するチャットボットから、積極的に課題を達成する主体へと移行します。そしてこの移行が、現在、進行しているのです。 過去36ヵ月で、翻訳や短い要約などの5秒から5分間の仕事を代行または補完可能な信頼できるアウトプットから、先に述べたような15分から、1時間の仕事で信頼できる成果を提供するモデルにまで進歩しました。そして毎回、懐疑的な向きがモデルの改善ペースが減速していると主張し、AIのインフラに対する数千億ドルの投資のリターンに疑問を呈するたびに、AIの研究機関は、新たな飛躍をし、経験豊富なアナリストすら驚かせて来ました。 これが弊社が2025年の重要なトレンドであると考える理由です。こうしたエージェントを活用できるAIの「アダプター」となる企業は、他社に水をあけ始めると見られます。その結果、企業の投資テーマにおけるAIの重要性の変化を追跡することが、今まで以上により重要になったと弊社は考えています。 弊社が2024年1月に初めてAI「アダプター」企業調査を実施してから、2025年1月の最新版発表に至るまでに、弊社がカバーする世界全体で数千社の企業に大きな変化がありました。現在進行中のこうした変容は、AIの普及が急速に進んでいるだけでなく、まだかなり初期の段階にあることを裏付けています。株式市場への影響に着目して、AIの進化が急速に進んでいることを理解するには、「変化率」の概念を理解する必要があります。弊社は、カバーする世界3,700社に対してAIマッピング調査を実施し、その結果を第3弾として発表したました。この調査で、AIのエクスポージャーまたは投資テーマにおけるAIの重要性を弊社アナリストが変更した企業は585社でした。しかも、前回の調査はわずか6ヵ月前でした。さらに世界の時価総額への影響は14兆ドル前後に上ります。このAI変化率は単なる「バズワード」ではなく、株価のアウトパフォーマンスを左右する具体的な指標です。このため、2024年下期を振り返って見ると、弊社アナリストが前回の調査でAIエクスポージャーとAI重要性の両方を上方修正した企業は、2024年下期に株式市場全体を20%超アウトパフォームしました。今後についても同じロジックを適用すると、何が最も大幅なアウトパフォーマンスをもたらすのでしょうか?それは...
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  • 25年の世界経済を 方向づけるもの
    Jan 7 2025
    弊社グローバル・チーフ・エコノミストのセス・カーペンターが25年の世界経済を左右する無数の変動要素を評価し、今年の経済はコロナ禍の開始以降で最も不確実性が強まると思われる理由を解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日はモルガン・スタンレーのグローバル・チーフ・エコノミストのセス・カーペンターが25年の展望と世界経済の見通しについて解説します。このエピソードは1月7日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。弊社が示す今年の見通しは、通常は市場のロードマップです。しかし、25年に関しては、読み手の自由な判断に任せる部分が含まれます。今年の見通しで強調した重要なテーマは不確実性です。特に、米国の次期政権は関税、移民、財政政策を自由に選ぶでしょう。不確実性の中にはFRBの12月会合でのリプライスやドル高などすでに市場で目に見える形となっているものもあります。弊社は関税と移民制限政策を背景にインフレ低下にブレーキがかかり成長が鈍るものの、そうなる時期はこれらの政策が徐々に進む年末だと基本的には考えています。実際にはこれらの政策の順序も実施規模もタイミングも未だ不透明ですが、それでも世界経済や各国の中央銀行に大きな影響を及ぼすでしょう。米国経済は雇用の堅調と底堅い消費支出という堅調な基礎に支えられて新しい年を迎えています。インフレ率は低下基調で、11月のインフレ指標は弊社の予想と一致しましたが、個人消費支出はFRBの予想を下回りました。FRBは12月の会合で政策金利を25ベーシスポイント引き下げましたが、パウエル議長は非常に慎重な姿勢で、FRBはインフレリスクが上方に偏ると見ています。パウエル議長はFOMCが次期政権による政策変更についての想定を組み入れ始めたところだと発言しました。弊社は現時点で、関税と移民制限によって景気は減速し、かつインフレ率が上昇すると確信していますが、これらの政策は丸1年かけて徐々に実施されると想定しています。そのため、スタグフレーション的な影響が強まるのは今年ではなく、26年になってからだと見ています。同じように、減税の延長措置も事実上丸一年かけて実施されると予想しています。このため、今年の財政に重要な影響はないものと見ています。実のところ、この大半は単に現行の税制の延長措置であるため、財政への正味の影響は26年も非常に小さいと考えます。さて、中国ではデフレ圧力が続く見通しで、米国の政策の不確実性が原因で政策対応は一段と難しくなるでしょう。政策当局が12月末の会議で発表した財政出動はわずかに上振れしたにとどまり、財政出動の詳細については3月に開かれる全人代まで待つ必要があるでしょう。一方、為替レートは弊社の休業中に1ドル 7.3人民元を超え、22年、23年のピークとほぼ同水準となりました。ドル高が修正の重石となっていることは明らかです。政策の枠組みは米中の潜在的な貿易関係を考慮する必要があります。このため、中国でも多くの不確実性が存在し、その多くは政策が原因です。ユーロ圏が抱える米国との貿易リスクは中国よりも小さいと言えるでしょう。ユーロ安は低下基調にあるインフレの安定化を助けると思われますが、弊社の見通しでは冴えない成長が見込まれます。個人消費支出は減速し、おそらく多少安定するでしょう。インフレ低下が続くほか、ECBが金融緩和政策を継続して設備投資を支えるためです。ただし、特にフランスとイタリアでは財政健全化が成長の大きなリスクとなり、貿易を巡って緊張が生じ投資が先送りされれば、成長がさらに弱まる可能性があります。一方、日本では日銀が1月か3月に利上げするかどうかが重要な議論になっています。日銀の植田総裁は直近の会合後、インフレ見通しの確信を深めたいと述べています。それでも、弊社は引き続き1月の...
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  • 昨年末の軟調が今年も続くのか
    Jan 6 2025
    最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソン 年末の米国株の下落と、市場寄りの政策によって今後のシナリオが変わるか否かについて、弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソン本日は年末の軟調とそれを受けた25年の見通しについて、モルガン・スタンレーの最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが解説します。このエピソードは1月6日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。米国株式市場は24年も堅調でしたが、12月は例外でした。年末に軟調となった理由はいくつか考えられます。ひとつは、株式市場が9月から11月末にかけて非常に好調な3カ月となり、同時に歴史的な強さとなった1年および2年間の続伸の頂点でもあったことです。この株価上昇は、夏場の景気後退懸念の逆転や、FRBが50ベーシスポイントという大幅な利下げに踏み切ったこと、選挙で共和党が圧勝し異議の余地のない結果となったために12月上旬にかけてヘッジのカバーがあったなど、複数のイベントが重なった結果です。弊社は10月に、選挙が圧倒的な結果となればS&P 500は6,100まで上昇する可能性があると述べましたが、この弊社見解とも一致します。2番目に、景気後退懸念が頂点に達した夏以降、長期金利がかなり上昇したことが挙げられます。重要なポイントは、FRBが100ベーシスポイント利下げした時期に10年物米国債利回りが100ベーシスポイント上昇していることです。雇用データが安定化する中でFRBがこれほど積極的な利下げを決定したことに対し、債券市場はおそらく疑問を呈しているのだと思います。また、タームプレミアムが9月の最低水準から77ベーシスポイント上昇していることも重要で、これはこのような環境と財政の持続可能性に関する不透明感の結果だと思われます。タームプレミアムの変化が50ベーシスポイントを大幅に超えてくると株式市場は注意を向け始め、バリュエーションが低下する可能性があると2カ月前に述べました。そして実際、タームプレミアムがこの閾値(しきいち)を超えた12月上旬から中旬ごろに、株式マルチプルはピークに達しています。3番目に、金利の上昇と選挙でのトランプ氏の勝利によってドル高が進行し、米国外収益の比率が高い銘柄にとっては足枷となりかねない水準に達していることが挙げられます。具体的に言うと、米ドルの上昇率は、歴史的にS&P 500企業の利益成長とガイダンスを圧迫する水準である前年比10%に急速に近づいています。これらすべての要素が重なってマーケット・ブレドスが悪化しており、ブレドスは今も警告を発しているように思えます。S&P 500指数の200日移動平均乖離率と200日移動平均を超えているS&P 500企業の比率の差が広がることは稀です。この差はブレドスが改善するか、あるいはS&P 500指数が200日移動平均に近づくことにより縮小し、S&P 500指数の200日移動平均は現在の価格よりも10%低い水準です。最初のシナリオは金利低下、ドル安、関税政策の明確化、利益予想修正トレンドの改善次第だと言えるでしょう。このように推移しない限り、25年はおそらく上期と下期で異なり、上期はより厳しく、下期は市場寄りの政策変更が期待通りの成果を上げるものと予想しています。もうひとつ指摘しておくと、近年はこの指数価格とブレドスの差が以前と比べて縮小しにくくなっており、これは財務省とFRBが潤沢な流動性を供給しているためだと思われます。他国の中央銀行による介入もこの助けとなっています。ドルベースの世界のマネーサプライの前年比増減率は、完璧な判断尺度ではないにしても、重要な変曲点を監視するよい方法であることが分...
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  • 嵐の前の静けさか?
    Dec 17 2024
    各国中央銀行の動きは2024年末まで予想通りになると見られるにもかかわらず、2025年は波乱が予想される理由を、弊社グローバル・チーフ・エコノミストが御説明します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社グローバル・チーフ・エコノミストのセス・カーペンターが、年末の各国中央銀行の動向が、驚くほどにかなりの確実性を伴って予想される点についてお話しします。このエピソードは12月17日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。年初からこれまでの期間とは異なり、各国中央銀行の年内の会合に関する予想は、確実性がはるかに高いようです。恐らく単なる嵐の前の静けさに過ぎないのでしょうが、今のところ、年末年始の休暇まで、穏やかな中央銀行の動向を享受しましょう。先週木曜日に欧州中銀は、弊社予想および市場の予想とぴったり一致する25ベーシスポイントの利下げを実施しました。同じように、経緯は全く異なるとは言え、FRBは今週25ベーシスポイントの利下げを実施すると弊社は予想しており、市場の予想もこれと同じと見られます。イングランド銀行と日銀は、いわば締め切り済み勘定になっていると弊社は考えています。つまり、新年まで新たな動きはないと見られます。欧州中銀は、利下げのペースを速めるべきか否かが議論される中、先週、25ベーシスポイントの利下げを実施しました。ディスインフレに関する疑いのほとんどが払拭され、意思決定のプロセスでは経済成長の下振れリスクが大きく浮上しました。制限的な金融政策の必要性が一段と薄れるようになり、欧州中銀のラガルド総裁の声明は、理事会で話し合った、政策金利が中立水準に到達するまで金融緩和を続けるとのスタンスを反映している模様です。問題は、次に何が起こるかです。欧州中銀は、中立水準まで利下げを行い、政策金利を1%に引き下げる必要があると判断すると弊社は見ています。これと好対照をなすのがFRBです。FRBにとって、成長に関して現在も残る懸念はほとんどありませんが、ディスインフレのペースに対する疑問は増大しています。最近の雇用データを例にとると、明らかにリセッションのリスクが小さいことを示唆しています。しかし、一部のFOMCメンバーからは、インフレ指標が実際には下げ渋っており、ディスインフレのプロセスが足踏み状態になっているかも知れないとの懸念の声が上がり始めました。弊社の視点では、先週のCPIデータおよび最新の他の全てのインフレ指標は、次のPCE指数に明確なディスインフレの持続が表われると示唆しており、FRBが12月に25ベーシスポイントの利下げを行なうとの予想に議論の余地はほとんどありません。実際、弊社が考える通りに低調であれば、1月にも利下げが実施される見込みが強まると弊社は考えています。それでも、残存季節性によるものであれ、新たに課される関税の転嫁と思われるものであれ、今後発表される指標にディスインフレ傾向の反転が表われた場合には、弊社の基本的な見解である3月と5月の利下げに対する逆風になるでしょう。そして、本当にFRBが利下げに対する慎重姿勢を強めているかを知る上で、来週の記者会見におけるパウエル議長の発言は極めて重要になると見られます。現時点では、イングランド銀行と日銀のいずれも、年内に新たな措置はとらないと弊社は予想しています。最近の円安を受けて今月にも利上げを行なうとの見方が浮上していますが、弊社は1月に利上げする見込みの方がはるかに大きいとの見解を維持しています。1月の方が、春闘の賃上げ交渉に対する洞察を深めることができる上、それによって将来のインフレも見極めやすくなるためです。また、最近の日銀高官の発言も弊社見解と一致します。さらに、特に1月23日と24日の金融政策決定会合の1週間前となる1月14日には、氷見野副総裁の懇談会...
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  • 株式市場は来る2025年をどう感じているのか
    Dec 10 2024
    モルガン・スタンレー最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンは、株式市場の動きから2025年については控えめながらも楽観的な見方がうかがえるものの、関税とインフレをめぐる懸念が市場参加者の期待を抑制しているとみています。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが選挙後の株式市場の展開を振り返り、弊社の考えとどの程度合致しているかについてお話しします。このエピソードは12月10日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。選挙が終わってから弊社では、2016年の選挙後に見られたようなアニマルスピリットの反転上昇が起きる可能性に注目しています。今では歴史となったあの時期には、我々が行ったセンチメント分析に示されたように企業、消費者、投資家の心理が幅広く改善しました。過去 1ヵ月間のセンチメントのデータは、小企業主導の比較的控えめな楽観論を反映したものになっていますが、実際のところ、サービス関連事業者の見通しはいくらか抑制されていました。こうした調査の詳細な結果や企業から寄せられたコメントを精査した限りでは、消費者と企業は2025年を迎えるにあたり、比較的楽観的ではあるものの、関税をめぐる不確実性や物価の高止まりにより、2016年の選挙後に見られたような熱狂にはおそらく至らないと思われます。2016年は、中国の積極的な景気刺激策もあって、米国が工業・製造業の不振から抜け出しつつあるときでもありました。この不振のために世界の金利水準は今よりもずっと低く、政府部門の赤字やバランスシートの状態は今よりはるかに良好だったため、減税や規制緩和といったリフレ的な政策の影響を吸収することができました。その結果、株式市場は、経済成長を促進すると解釈された財政拡張政策をほとんど即座に好感しました。しかし今日(こんにち)では、財政拡張政策はこの点でそれほど好感されているようには見えません。ひょっとしたら、財政赤字や政府部門のバランスシートといった制約の一部が響いているのかもしれません。それにもかかわらず、これらの原動力は、景気循環に比較的敏感なセクターを選好する我々にとっては依然として支援材料です。しかし、金利がなかなか動かない状況を考えると、景気敏感株のなかでもクオリティの高い銘柄を保有し続けたり、規制緩和が追い風になることが明らかなセクターに建設的に照準を合わせ続けることも理にかなっています。そのため、弊社では金融を筆頭にソフトウェア、公益事業、資本財・サービスの4セクターをオーバーウエイトとしています。金利については、S&P500のリターンと債券利回りの変化がプラスの相関関係を示していることが興味深いと感じています。言い換えれば、これは「良い」マクロ経済指標が株式のリターンにとっても「良い」ということです。さらにこの相関性は、景気敏感株とディフェンシブ株とではっきり2つに分かれています。景気敏感株は素材株を除いて金利との間にプラスの相関関係を示す一方、ディフェンシブ株は公益株を除いて金利との間にマイナスの相関関係を示しているのです。弊社ではこの現象を、たとえ利回りが比較的高い環境であっても景気敏感株と市場全体はやはりマクロ経済指標の改善を好感するしるしだ、ととらえています。とは言え、あまりハト派的でない金融政策が採られたりターム・プレミアムが上昇したりして金利が上昇する場合には、この力関係が逆回転する可能性が高くなるという点が存在します。今年4月には、10年物米国債の利回りが4.5%になるところで、経済成長とインフレがターム・プレミアムを押し上げていました。今のところ、米国債利回りはそれよりも低い水準に抑えられており、...
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