• ボイスドラマ「大学祭のピルエット」後編

  • Feb 7 2025
  • Length: 9 mins
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ボイスドラマ「大学祭のピルエット」後編

  • Summary

  • 前編では、息子の視点から「母の過去」が描かれましたが、今度は 若き日の父と母 の青春の物語です。夢を追いかけ、大学祭のステージに立つ彼女。その姿を見守る彼——そして二人の未来へとつながる「家具選び」のエピソード。 あの日、何を思い、何を選び、そしてどんな未来へ進もうとしたのか。「新生活応援」というテーマのもと、それぞれの人生の選択をじっくりと見つめていただけたら嬉しいです。 登場人物(※設定は毎回変わります) ・母/妻(21歳/28歳)・・・大学生時代は演劇部とダンス部をかけもち/現在はミュージカル劇団に所属して舞台に立っている(CV:桑木栄美里) ・父/夫(22歳/29歳)・・・妻とは高校〜大学の同級生で演劇の世界に憧れるも挫折して会社員に/現在は証券会社の営業(CV:日比野正裕) (※脚注) ・ピルエット・・・バレエ用語。 体を片脚で支え,それを軸に,そのままの位置でこまのように体を回転させること ・マチソワ・・・フランス語。昼公演が「マチネ」(matinee)、夜公演が 「ソワレ」(soiree)。1日2回公演ある日にどちらも観劇することを「マチソワ」という <妻21歳/夫22歳> (SE〜大学祭の雑踏+キャンパスの中におこる歓声と口笛) 彼: オープンカフェの前で、赤いドレスの彼女がピルエット(※)を舞う。 手作りの看板。手書きのメニュー。 大学祭の模擬店は、彼女のおかげで大賑わいだ。 彼女: 「いらっしゃいませ! ご注文は・・・? え?ここに書いてあること? もちろん、本当ですよ」 彼: メニューの横に赤い文字で書かれていたのは、 『スペシャルパフェ』ご注文の方へ。 もれなく、キュートなダンサーがバレエを踊ります』 さっきから、彼女のダンスがひっきりなしにオーダーされる。 彼女: 「ありがとうございました!」 彼: 「大丈夫?疲れてない?もう10回以上続けて回ってるじゃん」 彼女: 「ぜ〜んぜん大丈夫!あ〜楽しい〜!」 彼: 大丈夫なわけないと思うんだけどなあ。 (※)マチソワでミュージカルの舞台をこなしながら、 幕間で模擬店に立っているんだから。 僕なんて、午後1回の朗読劇だけで、ヘトヘトになっているっていうのに。 カメラを向けるお客さんの前でハイテンションのまま、 今度はパンシェ(※)を決める。思わず見惚(みと)れてしまう。 (SE〜カメラのシャッター音) 彼女: 「ねえ、模擬店ハケたら、家具屋さん行くこと覚えてる?」 彼: 「ああ、もちろんさ」 彼女: 「そっちも楽しみだなあ」 彼: 大学を卒業したら1人暮らしをする彼女のために、 今日夕方から家具屋さんに付き合うことになっている。 実は、昨日時間があいたから、1人で見に行ってきたんだ。 新生活応援フェア? とかいう、ちょうどぴったりなキャンペーンやってて、 イケてる家具がいっぱい並んでた。 彼女に絶対似合いそうな白いベッドにソファ、食卓、スタンドミラー・・・ いつかそこに僕も・・・ いやいやいや、そうじゃなくて。 同じ志を持つ2人が、一緒に頑張っていければいいな・・・ っておんなじことか。 そんなこんなで、いろんなことを考えながら、店内を何周もしちゃったよ。 彼女: 「ねえ、ごめんなさい。 ピルエットの注文いっぱい入っちゃった。 模擬店少し時間延長するって」 彼: 「いいよいいよ、家具屋さんだって早仕舞いはしないから」 彼女: 「ありがとう」 彼: 結局、家具屋さんに着いたのは、もうほとんど閉店間際だった。 それでも、笑顔で迎えてくれるお店の人に感謝して、 僕たちは家具の森を散策していった。 <妻28歳/夫29歳> (SE〜街角の雑踏) 彼女: 「私、次の公演で舞台を降りるわ」 彼: 「え?」 観劇の帰り道。彼女が笑顔で僕に言った。 lおかげで今日話そうと思っていたことがすっかりどこかへいってしまった。 彼女: 「大学卒業して、もう7年か・・・。 結構がんばってきたなあ」 彼: 「どういうことだよ?」 彼女: 「このままミュージカルを続けていっても プロとして大成できるとは思えないもの」 彼: 「そんなことないよ。君ならなれるさ。 あきらめるのは僕...
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